[↑目次へ]

毛髪を描く(3)


全体の陰影を描く

 やっと各オブジェクトの輪郭ができたので、陰影を付けてみましょう。

 いきなりですが、ここまではもう出来たことにしてしまいます。

 ブーイングが聞こえそうな気がしますが、ここまではひたすらマスクとエアブラシ、マーカーの繰り返しなので、どこにも新味がないのでパスします。注意点としては、影にあたるところはグレーに近い色を塗って、鮮やかさをできるだけ落とすようにすることぐらいでしょうか。
 実は、「マーカー」でブラウス部分を塗ったところ、少々タッチが荒すぎたため、発表時には「ムラが多い」というお叱りをいろんな方から頂いてしまいました。私としては、「CG=エアブラシ」以外の何かが欲しかったのですが・・・。

 さて、毛髪ですが、これは前回の「麦藁帽子」の延長として、下地に髪の地色を置き、上層に明暗をコントロールするオブジェクトを載せるという手を考えてみました。
(一見、この方法で髪の明暗はコントロールできそうに見えますが、実際にはこの手法には重大な欠陥があります。その理由は最後に述べてみたいと思います。)

陰影オブジェクトを載せる

 まず、髪のオブジェクトを[編集]-[複製]して、毛髪オブジェクトの真上に載せてみます。

 上に載せたオブジェクトを「頭髪(陰影)」と名付け、灰色で塗りつぶします。
 この陰影オブジェクトを、完全な黒髪と見立てて彩色してみます。

 またいきなり出来上がりを載せてしまいますが、要するに先に作成した「毛髪」ブラシの大中小を使い分けて、根性で塗り上げるというだけのことです。

 でも、このリアリティはただ塗れば出来上がるというものでもありません。
 実はこの髪の毛にはお手本の写真がありまして、その入念な観察によってこの毛並みが描かれています。そこで、普通に塗っただけの絵と、お手本がある場合の絵のどこに違いが出るかというと、

 こういったところに現れます。つまり、単純な流れを描くだけではなく、下層と上層で違う向きの髪の毛が重なるという表現、ここに髪の毛の立体感とリアリティが現れている(らしい)のです。
 そんなわけで、謎のテクニックを編み出すのも大事ですが、観察も大事だということで次に進みます。

合成モードを決める

 今回は、前作の麦藁帽子と同じく、下層に「色相」「彩度」を司るオブジェクトを1層、上層に「明るさ」を司るオブジェクトを1層載せることで、髪の陰影を表現します。
 すでに下層には色を塗ったオブジェクトがあるので、上層にあるこの黒髪のオブジェクトを、「ルミナンス」のモードで合成します。

 これでH(色相)S(彩度)L(明度)の3要素が揃ったことになり、豊かな陰影の髪の毛が出来上がりました。
 ここでは下地を1色で塗ってしまっていますが、これは本当は問題があります。というのは「日なたは鮮やかに、日陰はくすんだ色に」というルールを無視してしまっているからです。
 本当なら日陰にあたる部分は下地を灰色に近い色で塗り込んでおくべきなのですが、今回は陰のコントラストが十分に強いので、このままで放っておきます。もし金髪のようにシャドウが明るい場合は、彩度の面についても加工が必要になるでしょう。

 さらに、先にも述べたようにこの合成モードの選択には重大な欠陥があります。背景が白である限りは発覚することはないのですが・・・。

眉毛、睫毛を描く

 眉毛と睫毛も、髪の毛と同様にオブジェクトのアルファチャンネルを削り出す方法で作っています。

 ここについては、特に明るさのコントロールなどは行っていません。
 「毛髪細」のブラシをさらに細くして、描いては削っての繰り返しでこんな仕上げになりました。眉毛があまりに繊細に仕上がってしまったので、仕上げ作業のあいだ、このリアルタッチとアニメタッチの異様なバランスに変な気分になりそうでした。

瞳の仕上げ

 アニメ風の絵を描く人は、よく瞳に5層とかの大量のレイヤー(Photoshop用語:PPのオブジェクトとほぼ同義)を使って透き通った瞳を作りますが、私はほとんどの場合、肌のオブジェクト上に丸いマスクだけ作って、直接着色するという手段を用います。
 このときの瞳の作り方は、実はもう月日が経ちすぎたもので忘れてしまいました。
「毛髪(細)」ブラシで瞳の光彩(放射状の線。瞳孔を収縮させる筋肉のすじが形成した模様)を、外から「増加」内から「加色」で描いたことぐらいしかポイントとしては覚えていません。
 あとは、光沢を入れるブラシは、ただの白ではなく、水色あたりを「加色」合成モードのエアブラシで吹き付けています。そうすると、光沢の周囲もただの白ではない、鮮やかで透明感ある仕上がりになるのです。

 かなり駆け足の説明になってしまいましたが、今回は毛先の作り方がほぼ全てなのです。では、次に進みましょう。



[↑目次へ]