今回時間の都合で本編の構成をあまり変更できなかったのですが、研究会内教育の課程で第3版を待てない追加事項が発生したので、ここで付録として解説を設けたいと思います。
このところ当会の作品のデータを添削するに、データの命名規則やフォルダ配置が混乱して後にバックアップから復元が不可能になったりする事態が目立つようになったので、ここにファイルの命名規則と配置の原則を記したいと思います。
ここではよくないファイル命名方法を挙げて、その理由と対策を示していきましょう。まず基本的なミステイクを挙げます。
cut1.avi
このファイル名のよくないところは、まず「CUT」という名称を使っているところです。これでは、他の作品とファイルが混在してしまったときに区別が付きません。
また、いまは一本しかマシンに作品を載せていないとしても、あとで参照用にバックアップディスクから復元することは十分考慮するべきです。
もう一つよくないところは、番号を一桁で書いているところです。これで何が起きるかというと、たとえばカットが11個存在したとして、ファイル一覧を表示させたときに
cut1 cut10 cut11 cut2 cut3
上のようにファイル名の4文字目を基準に並べ替えが行われてしまい、後のファイルの整理に重大な支障を生じます。
正解は以下のようになります。
tokyo01.avi
上のようにデータの帰属を明確に、かつ予定される総カット数に応じて然るべき桁数を予め確保しておく必要があるわけです。
カット内OLとか、スーパーとかの合成を行う場合、たとえば窓の映り込みなどの場合に
tokyo01ベース.avi,tokyo01窓.avi
このような書き方をする人もいますが、これもバツです。
ファイル名に場合に漢字が入ってしまうと一覧を出した際の整列結果がどうなるかわからないというのが理由の一つ、またファイル命名者でなければ意図がわからなくなってしまう事態がありうることがもう一つなのですが、あと可読性などのためにも、他のカットとファイル名規則を統一させて、違いが一目で識別できるようにする必要があるのです。
tokyo01a.avi,tokyo01b.avi
通常はこのように記述すべきです。また、カット内の合成はあとで変更する可能性が低いため、ビデオ編集ソフトの負荷を下げるためにも、予め合成済みのファイルを生成しておいて、こちらを編集ソフトに回すことが作業効率向上のための重要なテクニックになりますが、この合成済みファイルは
tokyo01x.avi
このように命名する規則にしています。「X」という文字に特に根拠があるわけではありませんが、tokyo01c.aviのように続いた文字で命名してしまうと、材料なのか出来上がりなのか識別できなくなってしまうのでこれもバツです。
また、電算時代ならではの汚い技ですが、撮影中にミスが生じたら、タイムシートにメモを取って、あとで失敗したコマだけ削ってしまうという裏技があります。これを行う場合も、やはり修正版は「tokyo01x.avi」というように命名します。
撮影中のリテイクは避けられないものですが、その際のに古いバージョンを上書きで潰してしまうことはあまり感心できません。というのは、もしかしたら原稿の汚損や天災などの理由により、二度と同じカットの撮影が出来なくなるかもしれないし、リテイクの結果が必ずしも改善されるとは限らないためです。さらに、事故防止のためにも上書き操作は慎重に行うべきであるということもあります。
撮影中に細かくタイミングを変更している場合もあり得るし、後の参照用として没データをどこかに保管しておくことは結構重要です。
そこで、ファイルを世代管理するための命名規則を以下に記します。
初回テイク tokyo01.avi
2回テイク tokyo01t2.avi
尻にテイク数を記録するのが基本ですが、応用すると
初回テイク tokyo01a.avi tokyo01b.avi
初回テイク合成物 tokyo1x.avi
初回テイク tokyo01at2.avi tokyo01bt2.avi
初回テイク合成物 tokyo01xt2.avi
上記のようになります。
編集にはPremiereやMediaStudioを使用し、これで編集を行うと、ファイル間の結合状態を記述した「PPJ」「DVP」という形式の記録ファイルが発生します。
編集開始時にこのプロジェクトファイルを一度定めるわけですが、これが最後まで単一のプロジェクトファイルで一貫して進められるとは限りません。
途中で大きすぎる変更が生じた場合、取り返しのつかない変更に備えてプロジェクトのファイルを別途保管してやり直しが出来るようにするというのが一般的な解決策ですが、これが、それが正式採用版なのか解らなくなってしまうという混乱がよくあります。普通ならファイルの保存時間記録を見ればどうにかならなくもありませんが、それだけでは推論に多くを頼り、保存した本人以外に復元が出来なくなってしまいます。
この場合、一応本筋の編集プロジェクトは「tokyo.dvp」ですすめますが、バリエーションが生じる場合、作った責任者名と日付を明記してファイル名を生成するのがベストでしょう。
完成しても、機材の改善や新技術の発見、またミスの発見などにより完成品データを更新する場合があります。こういう場合、完成品もファイル名に日付をつけ「tokyo980401.avi」のように管理します。左のファイル名では2000年問題に対応できませんが特に問題もないのでこのままにしておきます。
すばやい編集操作とディスクの節約、また効率的なバックアップ作業のため、ディスクの整理は重要です。
また最悪な例を挙げると、最も始末に負えないのがルートディレクトリ(最上層のフォルダ)に全部、あるいは一部のファイルをぶち撒けてしまう行為です。これで複数の作品が同居していたりすると、もうパニックは間違いなしです。
またもう一つまずい例を挙げれば、作品のプロジェクトとは関係ないフォルダからデータを引っ張ってくる行為があります。これは、データ配置を移動したときやバックアップを復元したときなどに大変な障害になります。
以下に基本的なデータ配置を示します。
この d:\tokyo と d:\tokyo\sound の二カ所だけHDに配置すれば作品が再現できるようにするのがベストです。d:\tokyoには使わないファイルを配置するべきではないし、そこ以外に作品に直接使用するファイルを配置するべきでもありません。
dvpファイルと使用するファイルを同一のフォルダに配置するのには理由がありまして、同一フォルダなら、プロジェクト全体をバックアップから違うドライブに展開した場合でもエラーが発生しなくて済むのです。ということはすなわち複数フォルダにわたったプロジェクトを作成してしまった場合、バックアップから復元したときとか手狭になったDドライブからEドライブにデータを移送したときなどに「d:\tokyo\tokyo01.aviはどこだ〜」としつこく質問されるということでありまして、下手に配置すると、100MB中1MBしか用がないのに丸々HDにコピーするような無駄を発生させることになります。
作品プロジェクトには実に様々な付属データ類が発生します。たとえばカットごとのムービーデータが直接的にはそうでありますが、ほかにタイトルロゴのPhotoshopファイルとか、一時的に他のソフトに処理を回した場合のファイルなどもあります。さらに、ムービーに部分的修正を行うためにムービーを単体ファイルに解体したデータとか、もうわけがわからなくなってきます。
これらのうちプロジェクトにとって直接使われるエッセンシャルな部分が何処であるかを明らかにして、なくなっても死なない下準備段階のデータを分離することを心がけることが大事なわけで、そのためにはできればデータ管理責任者を用意してデータ整理のポリシーを一貫させることが望ましいと言えます。
他に、フォルダ名に日本語を使うとバグるソフトが存在します。たとえばぜんまいはうすAnimeStudio2ですが、これはぜんまいはうすの責任ではなくて使用しているApple Quicktime3.0の不具合のため、TARGA(tga)形式のファイルを日本語のフォルダに配置すると読み込みにエラーが発生してしまいます。他にも海外ソフトに処理を回す事例も多く、処理が済んでしまったファイルを「没」に放り込む場合などを除いては、出来る限りフォルダに漢字の名前を付けるのは避けるべきでしょう。
1998/12/30 早大アニメ研 渡辺邦統