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第4章 ソフトウェア

オペレーティングシステム

 Windows環境でのビデオ編集は、これまで泣いても笑ってもWindows95しかない状況でしたが、98年に入りWindowsNT4.0がようやくビデオ編集用途でも実用になってきました。
 Windows95は全体が臭くていまいち信用ならないし、内部構造もインテリジェントじゃないし、よくソフトウェアと一緒にクラッシュしてしまうし、そのうち起動しなくなってしまうし1、あまりお友達にはなりたくありません。
 NTは(比較的)頑丈な内部構造により長時間でも安定した作業を行えるようになっています。実際、Windows95では大規模な作品を扱ったりすると1日に2〜3回は再起動が発生するのに対して、NTならば1週間でもノンストップで計算させることも可能です。
 また、NTでは複数HDを1台として扱い速度と安定性を稼ぐ「RAID0」を装備しているため、ディスク回りに厳しいビデオ編集にはこれしかないという感じです。
 ただ、WindowsNTも3.51では堅固なOSとして定評がありましたが、4.0からはどうも市場に媚びた接ぎ木構造になった結果、いまいち怪しくなったという印象が拭えません。進んでも地獄、退いても地獄。Rhapsody for x86が出たら、幸せになれるのでしょうか。

録画ソフトウェア

 PowerCapturePCIを購入すると、VideoCommanderという録画再生ユーティリティが付いてきます。また、DC20にもマイクロソフトによるVideoCap32というサンプルプログラムが付いて来るのですが、前者はカット毎にファイル名を指定したい場合などに少々やりにくく、後者は秒あたりのコマ数が秒15に固定されてしまうあたりで実用になりません。
 また、これ以外のキャプチャカードを使用している場合(CANOPUS PowerWindowシリーズの入力機能や低価格級キャプチャカードを使う場合)にもソフトを統一したいので、録画プログラムはマイクロソフトのVidCap32を改造したオリジナルを使っています。単に、秒24コマに固定して、録画スタート時にファイル名を聞いてくるように変えただけですけど。
 ビデオ録画プログラムは、通常はどんなキャプチャカードと組んでも動作します。キャプチャカードを直接制御するプログラムを書くのは大変ですが、Windowsでは、メーカー製のデバイスドライバとユーザー側のプログラムの間の統一されたインターフェースが用意されているので、ハードウェアの差異に関係なく、比較的容易に録画プログラムを作成できるというわけです。メーカー製のプログラムでは、自社製のドライバと特別な情報をやり取りしている可能性もあり、よそのボードで動くかどうかは不明です。
 サンプルプログラムは、Win32SDKという開発キットに入っているのですが、これは市販のVisualC++などには添付されていません。残念ながらソフマップにも売っていません。先日マイクロソフトのWWWで配布されているのを見かけましたが、どうもイベント絡みだったようで、現在もあるかどうかは確認していません。

Intel Video Interactive

 これは、Windows用ビデオ圧縮展開コーデック(新しい圧縮方式を組み込む拡張キットと考えてください。配布時には生成側、再生側の両方に同じコーデックが装備されている必要があります。)の最新型です。Librettoに装備させたRATOCのキャプチャカードではMotion-JPEG形式が生成できないということで、次善の策として導入してみました。最新バージョンではQuick Compressモードというのがあり、1コマ0.3秒程度で圧縮が完了するので速度もなかなか良好だし、画質もいいので、現在Motion-JPEGに次いで最良の選択です。
 他の圧縮形式では、Cinepakだとやたら時間がかかるし、MS-Video1では画質が使い物にならないし、無圧縮ではディスク消費量が10倍に跳ね上がるし、どれも実用にはなりません。
 Codecの入手先は、http://www.intel.com/です。97年末現在はIndeo Video 5.02が最新のはずです。

編集ソフトウェア

Adobe Premiere4.2(アドビ・プレミア)

 現在、MacintoshとWindowsの両方の世界において最もメジャーな編集ソフトではないでしょうか。最強といわれるグラフィックソフトPhotoshopの開発元だけあって、画像同士の重ねあわせのバリエーションも豊富で、これ一本あれば大抵の需要を満たせる性能を持っています。そのかわりお値段もかなりのもので、生協の学生価格(何と半額)でも7万円もしてしまいます。
 特に複数のカットをまとめて移動させたりエフェクトをかけたりするあたりの機能でMediaStudio2.5を凌ぎますが、MediaStudioほどお気軽に編集をスタートできない面倒臭さと、多機能過ぎてわけのわからない用語がたくさん出現してしまうあたりが欠点で、このあたりが初心者にMediaStudioを薦める所以です。
 あと、「ぼかし」の機能に致命的な欠陥があり、透過光処理などを行う場合は一旦ムービーを解体してグラフィックソフトに処理を回す必要があります。ほかに、ファイル選択などでインテリジェンスが全く感じられず、かなりストレスを感じさせる仕様になっています。データを移転させるとプロジェクトが壊滅するのはまだ何とかできなくもありませんが、せめて前回ファイルを選択したフォルダくらいは覚えておいて欲しいものです。まったく、このような頭の悪いソフトが第一位になっているという現状は、かなり悲しいものがあります。

Ulead Media Studio2.5

 カノープスのPower Capture PCIを買うと標準で付いてくるソフトです。ほかにも様々なハードウェアに添付されているため、Premiereよりも目にすることが多いかもしれません。操作も簡単でとっつきやすく、初心者向けだと言えるでしょう。編集機能も一通り揃っており、ふつうの作品を作るには十分な性能があります。
 欠点は、多重露光に相当する機能がないところです。そのため、「東京の空の下」では、わざわざMS VisualTESTというおっかないソフトでフォトレタッチソフトを自動運転させ、1カット分の画像を1枚ずつ処理させるという強引な解決策に出てしまいました。Premiereを持っていればこんな苦労もなかったのに・・。
 もう一つの欠点は、複数カットに対するエフェクト指定を行うときの面倒臭さです。このあたりはPremiereに一歩譲りますが、複雑な機能のないところが逆に初心者にはいいのではないでしょうか。

Ulead Media Studio Pro5.0

 ノンリニアビデオ編集の理想形に近いスペックの最新ソフトです。性能はPremiereに対してほとんどの面で凌駕しており、強力な周辺ユーティリティにより、これ一本でかなり高度なビデオ編集が可能な仕様になっています。超強力な仕様の割には、インターフェースは以前と同じ簡単なものになっており、使い始めのとっつき易さはPremiereよりずっと良好です。
 多重露光や複数カットの一斉移動操作がサポートされたのはもちろん、レンダリングの精度や速度も大きく向上しています。特に注目に値するのは、出来上がったムービーに対して直接色塗りしてしまうという「Video Paint」機能でしょうか。これなら画像のゴミをいきなり消してしまうとかいった離れ業ができてしまいます。ほかにカラーバーを読んでキャプチャの色補正を行ってしまうようなどう使ったらいいのかわからないような高機能(?)も用意されています。
 5.0では動作に不安定なところがあり、場合によって再生できないムービーを作ってしまったり、テロップが正しく作成できなかったりしましたが、5月に公開された5.02アップデートにより大体解決したようです。
 全般にPremiereより機能が整理され、Premiereより頭がいいので、ビデオ編集は断然こちらしかありません。

Adobe Photoshop4.0

 泣く子も黙る、グラフィックソフトの王様です。「フォトレタッチソフト」と呼ばれますが、その名の通り、このソフトで加工された写真はきわめて自然で、コンピュータで加工されていることを全く意識させません。
 Windowsでのグラフィックスソフト普及の初期には、あまりにいいかげんなソフトが多く、使い物になるのはPhotoshop2.5しかなかった時代もあり、いまでもPhotoshopはグラフィックスソフトにおいては基本にして究極の地位を誇っています。あまりに有名なため、解説書も整っており、Photoshopを教えるセミナーも多く開かれています。
 ファイル交換においてもPhotoshopは業界標準であり、どのソフトもPhotoshopとのファイル交換の互換性だけは絶対に確保しています。これがメジャーの強みでしょうか。その代わり、プロフェッショナルが金を生むためのツールであるため、お値段はとても初心者には手のでない10万円というとんでもない額がついています。でもこれを使ったデザイナーが1枚何万円もの付加価値を生むことを考えれば、安いものかもしれません。
 正式版は学割を使っても5万円してしまうのでとても手が出ませんが、イメージスキャナなどを購入すると、LE(Limited Edition:機能制限)版がついてくることがあります。残念ながらこちらは非売品ですが、機能は拡張性が制限される他はほぼ同等で、入手できればとてもお得です。

Micrografx Picture Publisher7.0

 これはフォトレタッチソフト(要するに色塗りソフト)で、Micrografx ABC GraphicSuite2というパッケージソフトの中の一つです。雑誌でもほとんど取り上げられませんが、その性能はPhotoshopと互角かそれ以上、速度とメモリ、そしてお値段の効率性はずっと上になります。
 売りは、Photoshop4.0でも装備されましたが、一連の操作を記録して再現するマクロ機能です。100枚とかの画像を一括処理できるので、合成や修正に威力を発揮します。34回上映会オープニングでは、このソフトを使って後半部分の彩色を行っています。
 ABC GS2は、他にDesigner(ドロー)やFlowcharter、それにフォントが満載されて市価4万円前後と、Photoshopの半額以下の価格設定になっています。私としては断然おすすめなのですが・・・マイナーなんですよねえ。スクールに行ってみても、間違ってもPicturePublisher入門講座なんてやっていませんし、参考書も私が知る限りでは2冊(うち1冊はABC GS全般に関するもの)しかありません。以下に書名をあげておきます。秋葉原LAOXの書店コーナーでは存在を確認しています。かなりいい本だったのでおすすめです。

書名:Picture Publisherではじめるグラフィックワーク 出版社:ソフトバンク 著者:大島 篤 価格:2,700円

その他のソフトウェア

Adaptec EZ-SCSI4.5

 Adaptec製SCSI機器を10倍活用するというソフトで、Windows95標準のSCSIドライバより安定した動作が望めます。WindowsNTでスキャナやCD-RなどのSCSI機器を扱う場合は必須です。
 それよりお目当ては「ストライパ」機能で、これを使うとWindows95で専用ハードウェアを使わずにRAID0の機能が使えるようになるのです。複数のドライブから一番おいしい部分をかき集めて1ドライブにしてしまうという非常に魅力的な機能なので、HDが複数ある場合はぜひチャレンジしてみてください。但し、WindowsNTとの互換性がないという話なので、併用環境では禁じてになってしまうのが泣き所です。

Norton Utilities

 こちらは、主にハードディスクのメンテナンスを行うソフトです。Windowsにも簡易型のディスク検査・最適化プログラムが付属していますが、こちらはその機能強化版です。実は、SpeedDisk(最適化機能)にしか用はないのですが・・・。WindowsNTを導入する場合、95と違いデフラグ(最適化)が装備されていないので、こちらの導入が不可欠となります。
 また、実はNTのディスク診断は節穴もいいところなので、Nortonなしでは心配で心配でとてもやってられません。

Mifes/Win3.0ほか適当なバイナリエディタ

 これは、PremiereやMediaStudioの編集データをあちこち持ち歩く際に必要になります。Premiereではデータのあるフォルダ名やドライブ名が変わってしまうとプロジェクトが壊滅して真っ白になってしまうし(よそのコンピュータ上でも、パス名が一緒なら大丈夫)、MediaStudioも、多少のデータ移動ならいいのですが、大規模になると全ファイルの所在を質問してくるので大変です。
 そこで、バイナリエディタというソフトを使って、このプロジェクト保管ファイルの中身を直接いじってしまおうというものです。大抵の場合、書き換えポイントはドライブ名だけなので楽勝です。私は手持ちのMifesにこの機能があったのでそのまま使っていますが、フリーソフトでも同種のものが存在しているようです。

Quarterdeck MagnaRAM97

 こちらはメモリーを圧縮して容量を稼ぐという少々おっかない原理のソフト。でも実際の動作はかなり良好で、アプリケーションの起動が目にみえて速くなります。Windows98はアプリケーション起動が速いとかいいますが、こちらを知っていれば何を今更という感じです。
 システムの根幹までは圧縮できないため、メモリ装備がある一定値を超えたあたりから圧縮が効きはじめ、あとはメモリを持てば持つほど稼ぎも大きくなるという、富めるものにやさしいソフトです。
 特にグラフィックスではメモリが大きく稼げるため、素の状態に比べて3割から5割ほど大きな絵を描くことができます。但し、対象はWindows95と3.1に限られます。


※1:Windowsは100回起動すると勝手に壊れると私は主張しています。しばしばWindowsはマウスの操作を受け付けない「フリーズ」状態になりますが、これでマシンをリセットする度に、システムの傷は確実に増え、そのうち動作不能になります。
システムの異常をして異常と認識できるユーザーが極めて少ないのも問題です。正気で動作しているWindowsがあまりに少ないのが原因でしょう。

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