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初級編−干支を描く・着色の巻


オブジェクトを滑らかに塗る

 さあ、ここからが実は色塗りの本番だったりします。
 これまでは下準備だったのですが、いよいよ皆さんのタブレット捌きが光るときです。気合いをいれていってみましょう。

 まず、一番簡単だと思われる顔から始めてみます。
 オブジェクトマネージャから「肌」を選択します。
 画面上で、肌色領域にオブジェクト選択中の印である水色の点滅枠が表示されますが、着色の邪魔なので消します。[オブジェクト]-[点滅枠の非表示]を選択します。

オブジェクトの点滅枠の表示/非表示:[オブジェクト]-[点滅枠の表示(非表示)]または[CTRL]+[End]
同じくマスク点滅枠の表示/非表示は[マスク]-[マスクの非表示]または[Shift]+[End]

 [修正ブラシ]のアイコンを選択します。
 ここではブラシの選択は[エアブラシ]-[ソリッド]にします。
 [標準ブラシ]-[ソリッド]と違いがわかりにくいかもしれませんが、エアブラシは、吹き付ける時間で濃度が変化するという特徴があります。

肌を作る

 肌色の影色を作り、これを吹き付けます。


 このスポイトツールを使って絵から肌色を拾い直します。
 2種類のスポイトがありますが、左の方は1ピクセルから色を拾う方式で、右の方はマウスで囲んだエリアの平均を取得します。
 左のスポイトは、[Shift]+[F10]でも代用できます。

画面から既存の色を色見本に取り込む:[スポイトツール]アイコンまたは[Shift]+[F10]。左のスポイトは1ピクセルから色を取り、右のスポイトは囲んだ四角領域の平均色を取る。
 色見本アイコンをダブルクリックして、色味を影の色に作り直します。

 影の色は、色相は大体同じにしておいて明るさを落とし、同時に鮮やかさも少し落とします。
 慣れてきたら、色味も微妙に変えながらもっと色々なカラーを吹き付けます。

 吹き付けていて「しまった、やり過ぎた!」と思うことがあります。こういうときは、明るいところから色をスポイトで拾って吹き付けることにより、いくらでもやり直しが可能です。この無制限の修正というのはCG画材の最大のアドバンテージです。

 彩色は、まず広域の陰影を作り、それから細部のコントロールに入るのが最良です。
 最初はブラシサイズを50以上に設定して大体の影を作り、そのバランスが出来てから細部を塗り込んでいかないと、ムラを生じることになり始末に苦しみます。
 ブラシのサイズがを変更するには、[CTRL]+[↑(↓)]を使います。
 上部バーの[サイズ]項をクリックで変更してもいいのですが、作業中は左手でキーボードを操る方がスピーディです。

 向かって右から光が当たっていると想定して、軽く影を付けてみました。でも、まだ影に1色しか使っていないので、陰影が平坦すぎて物足りません。
 さらに暗い影色を作り、もっと豊かなコントラストを作ってみましょう。

寄り道:背景色の変更

・・・と、その前に白い背景では色彩感覚が引きずられて明るい方にシフトしてしまうので、予定する背景に近い色をバックに塗り込んでおきます。
 一旦オブジェクトの選択を[ベースイメージ]に戻して、キャラクタ以外の背景部分に濃いグレーを塗り込みます。例によって[スマート塗りつぶし]を使いますが、もう説明の必要はないですね? 

 背景をグレーに改めました。今のところ、そんなに色彩が浅すぎるということはなさそうです。
 では、着色の続きをしましょう。

 濃い色を塗り込むことで、だいぶそれらしい影ができてきました。
 影は、入れるべきところには思い切り入れる必要があります。
 ここだけの話ですが、エアブラシで描くと滑らかになりすぎて、過度の滑らかな絵は唯○詩樹先生とか麻宮○亜先生みたいに無機質になってしまうので、私は少々この画材が苦手だったりします。マーカーとかのほうが、手の触感が残るので好きですね。

ボディスーツを作る

 顔や腕は特に難しいところはないのですが、次のパーツからは少しずつ技術が必要になってきます。
 ボディスーツを作る場合のポイントは、光沢をきれいに入れることです。
 今回はエナメル質のスーツにしようと思いますが、光沢を入れる際の一般的な法則を下に示します。

 上図はPP8のグラデーション機能にプリセットされているものですが、これが金属質の素材にグラデーションをかける際の典型的パターンを示しています。
 上から順に「濃−淡−極濃−淡」というグラデーションをかけるわけですが、これがどういう意味かというと、まず最上段の濃い色が、空の高いところの濃い青を示し、中央付近が地平線付近の薄い青空、そして地平線、近くの地面・・という意味で、これを模式化したものが上図になるわけです。

 これは端的なサンプルですが、光沢物の一般解として、光沢のすぐそばに強い影を入れ、その先に弱い影を入れるというパターンは広く通用するものです。

 ではこのセオリーを応用して塗ってみる前に、使うブラシをもう1種類増やしましょう。[エアブラシ][ウエットソリッド]を使うと、塗るほどに濃くなるのでこういう強い影を作る時に有利です。
 なお、暗く塗りすぎたときは普通の[ソリッド]を使って修正します。ブラシの頻繁な切り替えは面倒なので、このブラシ選択のダイアログを常時表示にさせてしまいましょう。

 この赤丸の部分を掴んで引っ張ると、ブラシスタイルが独立表示されて、修正ツールを選択している間は表示されるようになります。本当は、枠がもう少し縦に伸びると嬉しいと思います。

 影だけ付けてみました。ここまで、ブラシはサイズ80にセットしたままで進めています。これは、ブラシの直径がグラデーションの発生範囲を司っているためで、これ以上径を小さくすると、似つかわしくない急激な明度変化が生じてしまいうまくいきません。
 おなかの上部に影があるのは、肋骨の下限の段差です。現実にこういう影が出るかどうかは・・・観察したことがないのでよくわかりません。バニースーツの素材というのは、水着などよりずっと厚い「服」の素材を使うらしいのですが・・・。
 ついで光沢を付けてみます。

 白を吹くとやりすぎなので、グレーを適度に吹き付けていきます。
 だいぶそれらしくなりましたが、ここから先程のグラデーションを応用してみましょう。

 うわー、うわー!やりすぎました。これでは寺○武一先生のコ○ラです。(笑)
 とりあえず解説しますと、胸の盛り上がりに、地平線に合わせた光沢を作り、その直下にかなり強めの影、そして胸の下側には床からの反射を想定して軽く明るめの彩色をして、その対照として肋骨のところに再度やや強めの影を入れています。

 では、さらに皺とかの凹凸を細かく作り込んでいきます。
 ・・・と思ったのですが、衣装が黒すぎて、いじりにくくて仕方がありません。
 そこで少しインチキをしてモニターの「明るさ」を思い切り上げて、暗部もよく見えるようにして対処することにします。
 
 脇腹のシワを作るために、黒い線を数本引きます。
 このサンプル画像は、見えやすいように明るさを上げてあります。

 WWW中を検索して調べ回った結果、どうやらバニーガールの衣装というのは、シワがくぼむように入るらしいということがわかったので、シワの上端にキツい線を入れ、そこから下と横にシワが広がるようにしてみます。

 さて、ここは「にじみ」のブラシを使ってこのシワを自然に処理させてみましょう。
 ブラシスタイルを[にじみブラシ]-[ソリッド]に設定します。

 このにじみブラシは、自分の色を持っていませんが、画面をこすると、引っ張るようにじみが生じるという特性を持っています。
 このブラシでシワの周辺を伸ばしたり縮めたりしながら、それらしいシワに仕上げてみましょう。

 こんなシワは描いたことがないのでだいぶ手こずりましたが、なんとかそれらしくなったようです。シワの上端には細く絞ったエアブラシを吹き付けて、エッジを強化してあります。
 白で光沢を入れると怖い絵になってしまったので、これはなかったことにしました。

 では、続いて縫い目の凹凸を表現してみましょう。実は下絵では抜けているのですが、胸のところの縫い目は脚まで続かなければならないらしく、また脇腹にも縫い目が必要らしいのです。仕方ないので、一度セーブしてからぶっつけ本番で行ってみましょう。
 [CTRL]+[S]で保存します。



 縫い目のたぐいは、光源に近い側に影が生じ、遠い側に光沢が生じます。まず胸のあたりから始めましょう。

 左胸に軽くそれらしい陰影を付けてみました。
 でも、どうも最初に作った黒線が邪魔なようです。ここは、黒線に消えてもらうことにしたいところですが、ここはオブジェクトが存在せず、最下層のベースイメージがそのまま見えています。そこで、ここに空いているオブジェクトの「穴」を塞いでしまいましょう。


オブジェクトの輪郭(可視領域)をコントロールする

 オブジェクトの存在・非存在をコントロールするには、オブジェクトの「アルファチャンネル」というものをコントロールします。これは、普段見えていないオブジェクトの「影」ともいうべきもので、ここにオブジェクトの見える範囲が描かれています。
 ここは概念的に難しいので、今回は臨時で加工するだけで、本格的な説明は後章に回します。

 まず、オブジェクトをはっきりさせるため、オブジェクトの下にダミーの白オブジェクトを配置します。
 オブジェクトマネージャで[ベースイメージ]を選び、[編集]-[複製]します。
複製されたベースイメージが最上層に表示される。これを白で塗りつぶして下敷きにする。
 すると、ベースイメージのコピーが最上層に出現するので、これを白で塗りつぶします。

 塗りつぶしツールを選択して、ブラシの色を白にします。
 これで、オブジェクトである方の[ベースイメージ]が選択されていることを確かめてから画面をクリックして塗りつぶします。
 このツールは、マスクやオブジェクトが設定されている範囲を全部塗りつぶしてしまうという効果があります。

 これで出来た白いオブジェクトを、↓アイコンを使ってボディスーツの下まで配置して、他のオブジェクトの表示を全部切ります。

 本当にオブジェクトに穴が空いているのがわかりますね。
 では、ボディスーツのオブジェクトを選択してから、オブジェクトマネージャ上の「α」印のアイコンを叩きまして、オブジェクトのアルファを編集しましょう。

 表示が変化しました。この赤い背景は、以前出てきた「ルビーオーバーレイ」による着色不可能な領域のしるしです。このマスクが赤くかかっているところは安全領域で色が塗れないわけです。
 これは、オブジェクトの外形をうかつに崩さないための安全装置なのですが、今回はこれを外さなければオブジェクトの穴を埋めることが出来ません。
 [マスク]-[マスクの削除]を選ぶと、マスクが消滅します。

オブジェクトの輪郭を修正する:[オブジェクト]-[オブジェクトのアルファを編集]または[オブジェクトマネージャ]上の[α]アイコン。
使える色は黒、グレー、白に限られ、対象に白を塗ると可視に、黒を塗ると不可視になる。
最初は輪郭保護のためにマスクがかかっているので注意。
 オブジェクトの可視範囲を変化させるためには、この見えているオブジェクトの上から白または黒、グレーを塗ります。すると、この「アルファチャンネル」を直接見ることはできませんが、塗るに従ってオブジェクトが見えるようになったり見えなくなったりするので、これで可視性をコントロールできるわけです。
 ここで、オブジェクトのアルファ編集中の約束があります。オブジェクトはアルファに白を塗ると存在になり、黒を塗ると非存在になる、これが可視領域をコントロールする際の約束です。


 それでは、ブラシの色を「存在」の「白」にして、筆先を[標準ブラシ]-[ソリッド][サイズ]を5前後、[ぼかし]をゼロに設定し、この穴の部分を塗ってみます。

 見事にオブジェクトの穴が消滅しました。
 それでは忘れないうちに[α]マークを叩いてオブジェクトのアルファ編集のモードを解除します。私などはうっかりそのまま着色しようとして絵をぐちゃぐちゃにしてしまうことが多いので、こういう非常モードを扱うときは解除の習慣づけが大事になってきます。

オブジェクトの輪郭・可視範囲の編集:[オブジェクト]-[オブジェクトのアルファを編集]または[オブジェクトマネージャ][α]アイコンをクリック。
 オブジェクトマネージャの表示を元に戻します。
 先程作った白いオブジェクトですが、先程と同様の使い道がまだ数度あるかもしれないので、捨てないで非表示でとっておきましょう。
 ここで、後戻りできるように一旦保存します。

縫い目を描く

 では色塗りを続けましょう。

 黒線を右に、灰線をすぐ左に引いて、適度に先程のにじみブラシも併用してなじませると、このような仕上がりになりました。おお、何というリアリティ。
 さらに胴体のあたりまで作業を進めますが、その前にもう一度保存しましょう。

 フリーハンドで白い線を描き込み、すぐ右に黒い線を引いて、にじみでならしていきます。
 作業をしやすいように、画面をかなり明るくしています。

 ここでのポイントはデッサン上のポイントになるのですが、まず縫い目は上半身の軽いひねりに合わせて左上から右下に流れます。あと、脚の付け根と縫い目の交点の高さが左右で大体一致するようにします。
 もう一点、この縫い目の線はまっすぐ引かないで、体の凹凸に合わせて軽く曲線を描きます。この場合、少し肋骨下端の凹凸を意識しています。あと右腹の方はスーツのシワに合わせてちょっとだけ線を揺らしています。
 脇腹の縫い目は、おなかの縫い目とほぼ同じですが、シワの凸面だけ線を描き、シワの影のところはそのままにしています。

 だいぶそれらしくなったようです。
 それでは、軽く陰影を調整して、あと脇腹下のリボンを仕上げたらボディスーツは終わりにしたいと思います。
 あと、軽く縫い目を鮮鋭化させてみましょう。

 この[鉛筆ブラシ]は、なぞったところをシャープにして、不鮮明なエッジを鮮明にする効果があります。これで縫い目を軽くなぞり、縫い目の凹凸をシャープに仕上げます。

(実はここで胸の下面の光沢に長時間苦しんでいたりします)
 本当はエナメル仕上げとかにしてみたかった気もするのですが、そうすると光の反射が大変難しくなり、現物の観察なしにはお手上げになってしまいます。そんなわけで、半光沢素材で落ち着けることにしました。
 せっかく作った脇腹のシワがほとんど見えなくなってしまいましたが、こういうところの細かい描写の「あるような気がする」という感覚がCGのリアリティ品質を左右する・・・ということにして(本当?)、次に進みましょう。
 せっかくのスーツがなくなってしまわないように[CTRL]+[S]で保存します。


髪の毛を作る

 髪の毛は、コンピュータを使えばアニメ調からバリバリのフォトリアリスティックまで自在に作ることができますが、ここでは半アニメ調でいってみたいと思います。
 影をどう作るかは流儀の分かれるところだと思いますが、私は明るいパーツから影を作り込んでいく方法を好みます。ハイライトも、明るい色を塗るよりは塗り残して作る方法の方が、色鉛筆などの画材を使うときと同じ要領なのでわかりやすいのですが、自然画材のキャリアのない人にはこの方法は難しいかもしれません。
 というわけで、ここでは影を先に作ってからハイライトを入れるというアプローチでいってみたいと思います。

まず髪の毛のオブジェクトを選択します。
頭髪部の初期状態
 早速、この髪の毛の色を[スポイト]で拾って、塗るほど濃くなる[エアブラシ]-[ウエットスキャタ]で影を付けてみます。
 今回も例によって、大きな影から小さな影へと作業を進めましょう。
影だけつけてみたところ
 まず大きなエアブラシ(今回は半径50)で大局的な影を作ってみましょう。
 世の中にはこの影だけで完成してしまうようなポップな画風もありますが、このキャラクタではそこそこ高めの頭身に作ってしまった宿命として、各パーツはちゃんと描き込まないと絵のバランスが取れません。

 最初の色が少し暗すぎたので、前髪を明るく塗り直して、そこに再度影を描き込んでいきます。
 パレットの髪色をぐっと明るくして、[エアブラシ]-[ソリッド]で髪の流れに軽く合わせて塗り込んでみます。明色部分をおおざっぱに作ったところ
 ちょっと前髪が明るくなりました。
 それでは、塗るほど濃くなる[ウエットソリッド]のエアブラシで房ごとの影を作っていきます。
前髪にも影を入れたところ
 これで房同士の間に影を塗り込み、場所によってはに再度明色を塗り直しながら上図のような仕上がりになりました。
 ちょっと髪の色が気に入らなかったので、ブラシの色に軽く赤みを加えてあります。
 ここではサイズ10前後のブラシを使って、髪の先から内側に向かってなぞるように色を付けています。

 では、さらにPPの機能を使って髪を輝かせてみましょう。

 この[明色ブラシ]を使うと、画像に光が当たったような輝きを作ることができ、同時に明るい部分らしく色が若干鮮やかになる効果があります。
 本当は写真でメタリックな物体を撮って補整するような時に使うと実に効果的なのですが、せっかくなのでこの髪の毛にも使ってみます。
太陽のブラシで強い光沢を作ったところ
 アニメ調の髪の毛の光沢は一般に「天使の輪」とか言われますが、この絵でも大体それに準拠した光沢を付けています。
 もっと髪の毛にはムラを作って、流れるような感触を作りたいのですが、これについては究極的なテクニックがあるので、後章で別のサンプルを用意して解説したいと思います。髪の毛はこんなところで、さっさと次へ進みましょう。[CTRL]+[S]で保存します。


脚を作る

 では、次に脚の作り方に入ります。
 ここは、これまでよりも少し凝った方法を使って仕上げる必要があります。というのは、この脚にはただの色塗りではなく、網靴下を履かせなければならないためです。
 日本では風俗営業法第99条によって、バニースーツには網靴下を必ず装備しなければならないと定められています。ここでは、ホームページ用ツールなども応用しながら靴下を作ってみましょう。
下地だけ塗ったところ
 まず、靴下は別に作るため、下地の脚だけ先に塗ってしまいます。靴下を上からかぶせるので、厳密さはそんなに要りません。

幾何学的模様を作る

 次いで靴下を作りたいのですが、これは模様を数学的に作らなくてはいけないので、一旦新しいイメージを作成します。
 [ファイル]-[新規作成]で新イメージを作成します。サイズは横346×縦600とします。

 次いで、[描画ツール]-[標準鉛筆]を選択します。

 これを上図の通りの設定にします。
 さらに、今回は座標を決め打ちして作業するので、座標を表示できるように[表示]-[情報の表示]を有効にします。
カーソル座標、選択サイズの表示:[表示]-[情報の表示]または[F11]
 これで、1ピクセル単位での厳密な描画ができるようになりました。
 では、かなり大きい画像ですが、網目を作ってみましょう。6角にこだわらなければもっと簡単に済ませられるのですが、ただの格子は結構出回っているのでちょっと物足らない・・・というわがままで、あえて荊の道を選びます。
 大体、ただの模様を作るのにこんな大きなサイズを選んだのは、三平方の定理から6角形の辺の長さを暗算しやすいように桁数を大きく取ったらこんなになってしまった、というのが原因なのです。きっと、もっとうまい計算法がどこかにあると思います。

 以下の座標に従って、線を引いてみましょう。

 鉛筆ツールは、線の始点で一度クリックして、通過点でクリック、終点でダブルクリックすると線が描かれるようになっています。
 引けましたか?そうしたら、一旦保存させましょう。
 [CTRL]+[S]で保存ですが、新しいファイル保存なので、ファイル名問い合わせのダイアログが表示されます。ここでは「net.ppf」とでもして保存しましょう。

 この網目のままでは少々都合が悪いので、[エフェクト]-[ウィザード]-[タイルクリエーター]を使って、この模様が繰り返し模様になっても大丈夫なように加工します。

 [45度フリップ]でもいいのですが、網目の結節点を微調整したい気もするので、結節点が画面隅に行かないように[オフセット]で微調整します。
 これで[完了]すると、ちょっとだけ違った模様が新ファイルとして出現します。
 網目に少しおかしいところがあるので直して、これを縮小します。

イメージを縮小する

 画像を小さくするには、[イメージ]-[サイズ変更]を行います。
画像の拡大縮小:[イメージ]-[サイズ変更]または[CTRL]+[Shift]+[Y]

 数値は上のように設定します。根拠は・・・ここに書く前に何度も実験しました。(^^:
 もう少し目を細かくしたいところだったのですが、これ以上小さくすると、最後にサイズ調整を行う段階で模様が崩れて醜くなってしまうので、現在の私の科学力ではこのあたりが限度です。

 だいぶ小さくなりました。ただ、縮小と同時に、黒線が白にまじってしまってコントラストが弱くなっています。これを補強しましょう。

 こういう時は、[エフェクト]-[イメージ効果]を使います。[補正]-[トーンバランス]とか同様の効果が得られます。何故こちらかというと、操作がお手軽だから・・・それだけです。

 [プレビュー]すると上図の通り線が濃くなるので、[OK]でエフェクトを実行します。[更新]は、このエフェクトを実行してから続けて別のエフェクトもかけたいというときに、ダイアログを閉じないで連続エフェクト実行ができる機能です。

画像へのエフェクト:[エフェクト]-[イメージ効果]または[CTRL]+[E]
エフェクトには「ウィザード」類もあるので、こちらのチェックも忘れないように。
 それで、この模様で脚に塗りつぶしをかけられるように、イメージを模様のライブラリに追加させます。

 イメージ上で右クリックすると、コンテキストメニューが出るので[行き先を指定してコピー]させます。

 名前は「6角網」とでもして、[コピー]を実行します。

模様で塗りつぶす

 さて、先程作った模様を早速応用してみましょう。
 先程から放置していたウサギさんのウインドウに戻り、オブジェクトマネージャを開きます。

 ちょっとオブジェクトの名前を変えましたが、「脚」(旧称靴下)のオブジェクトを選択して、[編集]-[複製]または[CTRL]+[D]でオブジェクトを増殖させます。さらに、一応心理上の整理のため、増えたオブジェクトは「脚」のすぐ上に配置して「靴下模様」に名称変更します。
 このオブジェクトを選択して、[塗りつぶし]-[模様塗りつぶし]をかけます。

 [模様塗りつぶし]という機能は、PP8のなかで最重要の機能で、これの装備によりPhotoshopなど比べ物にならない高いグラフィック生産性を実現しています。早速、ちょっと模様で塗って遊んでみましょう。

 [模様]のボタンを叩くと、標準装備された様々な模様の一覧が表示されます。マル印を付けたところのスクロールバーを叩くと、もっとたくさんの模様が出てきます。ここではちょっと変わった[ごみ]の模様で塗ってみましょう。

 なんかすごいことになってしまいました。
 これはこれで結構面白そうなのですが、今回は寄り道はほどほどにして、[6角網]の模様で塗り直します。

 脚の端で模様の遠近が付かないのが心残りなのですが、ここを処理すると結構手間がかかるので初級者コースではパスすることにします。決して無理ではないのですが、初級編の最初の1枚で工数が増えすぎるのは望ましくありません。(もう模様で十分増やしてるって)

 さて、この模様をオブジェクトの合成モードの変更で靴下らしく重ねてみましょう。

 [選択]の白矢印アイコンを叩きますと、
 いつか見たバーが表示されました。ここの[混合モード][増加]にします。このモードならオブジェクトは重ねるほど濃くなるので、靴下にも向いています。白い網靴下・・・とかいう時は別の対処を考えますが、「オブジェクト」の理解が進んでからでないと難しいと思います。

 じゃーん。見事に網靴下が出来ました。模様に遠近がないうえに、両脚の模様がつながっているのが大変気に入らないのですが、これも結構手間なのでステップアップ編でも設けることにして、先を急ぎます。
 模様が若干薄い気がするのですが・・・気になる人は「靴下模様」のオブジェクトに再度[細部拡張]でもかけてやってください。
 さあ、せっかくの網がなくならないように[CTRL]+[S]で保存です。


その他のパーツの仕上げ

 もう大体難しいところは終わりました。あとは耳と首周り、手首・・・(あぁっ、靴塗り忘れてる!)
 そういうわけで、残ったパーツをさっさと片付けましょう。

 白い物に影を付けるときは、特に光源の指定がない場合には、灰色に軽く青を混ぜるのが一般的です。
 これは、太陽の下に立ったとき、日光を浴びる部分は白色になるわけですが、直接日光を浴びないところには、青空の青が映り込むという現象を根拠としています。
 このシチュエーションでは青空も何もあったものではありませんが、何もないときにはとりあえず水色の影、ということでいってみましょう。

 耳と襟、ネクタイを塗ったところです。折れた左耳の方は、フチに強く白を吹き付けて厚みを表現してあります。ネクタイは、結び目のところに「ありがちな」凹みを作り、あとは縁に軽い光沢と影を付けている程度です。手首のカフスとかも以下同文、ということで顔面のパーツの仕上げを残して色塗りは大体終了です。
 くりかえしますが、色塗りは大局的なところから始めて細部に至るというのがセオリーです。エアブラシのサイズは常に大きく保つこと、これが局地的な塗りすぎを防ぎ滑らかな仕上がりを得る秘訣です。そのためにはマシンパワーとか良質なグラフィックカードが必要になってしまうわけですが。

 これで主なパーツは大体出来上がりです。でも、線がギザギザだし、眼のあたりが未処理です。眼はデリケートなので、次の「線の処理」が終わってから作業に入りたいと思います。そのまえに保存しましょう。
 では、最初の方で「極秘」だとか言っていた、線の処理の続きにいきましょう。


線を滑らかに合成する

 さて、スキャンしていきなりギザギザにしてしまったウサギさんですが、そろそろ滑らかな線に戻して上げましょう。
 ここの技術の概要は、ギザギザの黒い線のところに周囲の肌色とか髪色とかをしみ込ませて輪郭線もろともギザギザを消滅させてしまい、そこに上から初期の鉛筆の線を重ねる、というものです。

オブジェクトを統合して新しいオブジェクトを作る

 まず、違うオブジェクトから色をしみ込ませることはできないので、一旦現在の画像を1枚に重ねる必要があります。
 普通なら[オブジェクト]-[オブジェクトの結合]でいいのですが、ここで結合をやってしまうとパーツの切り分けがなくなって都合が悪いため、ちょっと特殊な操作で全てのオブジェクトが重なった状態を一枚の新オブジェクトに複写させます。この操作はちょっと裏技臭いかもしれません。
オブジェクトを一枚にまとめる:普通なら[オブジェクト]-[オブジェクトの結合]
但しここではオブジェクトを結合させないで、同時に結合されたオブジェクトを生成させるため以下の手順に従う。
現在見えている画像をオブジェクトに複写する:[ベースイメージ]を全面マスク選択したうえで[編集]-[コピー]、次いで[編集]-[貼り付け]
  1.  まず、絵が全部一画面で見えるように、画像を縮小表示させます。(一部分しか表示されていないような場合、後の「貼り付け」がおかしくなってしまいます。)
  2.  オブジェクトマネージャで[ベースイメージ]を選択します。
  3.  そして[マスク]-[イメージ全体をマスク]で画面全域にマスク選択をかけます。
  4.  [編集]-[コピー]で画面をWindowsシステムの「クリップボード」という一時領域に取り込みます。コピー操作では、オブジェクトが選択されている場合はそのオブジェクトが、ベースイメージが選択されている場合は現在見えているそのままの画像がクリップボードに取り込まれます。
  5.  [編集]-[貼り付け]でクリップボードの画像を新しいオブジェクトとして最上層に貼り付けます。貼り付けられたオブジェクトは通常は今見えている画面の中央に配置されます。

  6.  Micrografxは貼り付け操作は当然注目部位に行うものだと考えているようなのですが、まあそういうことなので、貼り付けコマンドは絵の全域を表示させた状態で行う必要があります。貼り付け場所がここでいいかと点滅枠で聞かれますので、[Enter]キーで確定させます。
 新しいオブジェクトが最上層に現れるので、これを「統合画像」とでもしておきましょう。
最上層に現れた「統合画像」オブジェクト
 こうすると、現在編集中の絵の複数オブジェクトを、表示状態そのままに1枚のオブジェクトに写すことができるのです。急に新しい操作がたくさん出てきましたが、ここは我慢して付き合ってください。

 続いて、全オブジェクトの表示を切って[ベースイメージ]を選択し、[マスク]-[クロママスク]で黒のピクセルにマスクをかけます。

 何故先程の[統合画像]オブジェクトに直接クロママスクをやらないのかというと、暗く塗り込んだスーツとかがもし純黒に塗られていたら、そこも[クロママスク]に反応してしまうためです。そこで、こういう処理のために不純データの少ない[ベースイメージ]を最後まで残していたわけです。

エフェクトで輪郭線を潰す

 再度、先程作った「統合画像」オブジェクトを選択します。選択すると自動的に表示が有効になります。
 [統合画像]にマスクがかかった状態
 まだ先程のクロママスクは生きていますから、このマスクに基づいてエフェクトをかけて、黒い輪郭線を潰してしまいます。

 [エフェクト]-[イメージ効果]を選択します。

 まず[スムーズ]-[最大]を選び、度合いは2のままで[更新]します。[OK]を押さないのは、まだ続けてエフェクトを実行するためです。
 この「最大」という言葉は不可解で誤訳の匂いがするのですが、意味としては、マスク領域に内部自身およびマスク外部の色をにじみ込ませるにあたって、明るいものを優先して描画するという意味です。そのため、右の「プレビュー」の領域を見ると、髪の輪郭線だったところに明るい方の肌色がしみ込んでいるわけです。

 続いて[スムーズ]-[最小]を選び、度合いは2のままで[更新]します。
 「最小」は先とは逆に、隣接画像のうち暗い方がにじみ込むという演算方式で、線のあったところは暗い方の色で潰されます
。先に「最大」で処理しないと、黒に暗い色をにじませても黒が優先されるので効果が出ません。

 最後に[スムーズ]-[平均]を選び、度合いは2のままで[更新][OK]で確定します。この段階で、輪郭線が明暗のブレンドになり、その上に線を重ねることでギザギザの出ない輪郭が出来上がるわけです。

オブジェクトの不要部分を削る

 さらにこの[統合画像]オブジェクトには、輪郭線部分だけのオブジェクトになってもらい、背景がちゃんと見えるようにします。現状では色が一緒のため見えませんが、[統合画像]が画面全域を覆っているためベースイメージが全く見えなくなってしまっているのです。
 これは最後に支障を来すので、[統合画像]からさらにマスク形状に従って新しいオブジェクトを作り、輪郭線相当部分だけのオブジェクトにしてしまいます。
 
  1. まず[統合画像]を選択します・・・当然もう選択してますよね?
  2. 輪郭線の形のマスクが現在有効なので、[オブジェクト]-[マスクからオブジェクトの作成]を選び、[統合画像]のところから輪郭部分だけで新しいオブジェクトを生成します。名前は[統合画像輪郭]とでもしておきましょう。
  3. [統合画像]は、もう削除してしまってかまいません。オブジェクトの削除は[オブジェクトマネージャ]下端の赤いバツ印アイコンです。当然ながら、選択されているオブジェクトが削除されます。

 上図では、オブジェクトが見やすいように以前作った[白紙]オブジェクトを下敷きにしています。なんか不思議な画像ですね。

 胸のところとかにはオブジェクトの輪郭をいじったところがあるので、それらが優先して表示されるように、[統合画像輪郭]オブジェクトは最下層に移動してもらいます。

滑らかな線を重ねる


 「アナログ線画」のオブジェクトを復活させたところです。鎖骨のところの線を見ると効果が一目瞭然ですね。
 本当はこれも結構乱暴な処理でして、ウサ耳や左肩のところにギザギザが残っているのがわかるかと思うのですが、最後の仕上げ段階で縮小をかけるので、ここである程度滑らかになり目立たなくできるはずです。
 「統合画像」オブジェクトを丁寧にレタッチすれば輪郭はもっときれいになりますが、ここはスピード仕上げでいきましょう。クオリティは大丈夫なはずですから。

眼を作る

 では、いよいよ眼を作ってみましょう。昔の中国では、竜の絵を描いて眼を入れるとその竜が絵から飛び出し天に駆け上るといわれ、そのため竜の絵を描くときには眼を入れてはいけないと伝えられます。(「画竜点睛」の故事−−民明書房刊『故事成語大辞典』より) でも最近はそういうことは滅多に起きないということなので安心して眼の描写に取りかかりましょう。

マスクで範囲を作る

 最初の方で出てきた「マスク」を使用して、眼の周りに彩色範囲の制限を作りましょう。
 ここでは、マスクをフリーハンドで作ります。ブラシ感覚でマスクを切れる[ペイントブラシ]を選択します。

 このブラシの設定は普通のブラシとほぼ同様です。以下にバーの表示を示します。

 点線のマスクでは微妙な輪郭がわからないので、ルビーオーバーレイを有効にします。
アイコンを叩いてルビーオーバーレイを有効にします。
 既存のマスクは[マスク]-[マスクの削除]で除去します。マスクがない状態では赤色表示が出てきませんが、どこかにマスクを切った時点から保護領域が赤く表示されるようになります。

 これで眼の領域にマスクを作り、[オブジェクト]-[マスクからオブジェクトの作成]でオブジェクト化します。
 直接塗ってもいいのですが、顔には輪郭線のとこで穴があいており、処理が面倒なので手っ取り早い方を選びます。

 眼のオブジェクトが出現したので、これを肌の上層に載せ、白で塗ります。

 さらに瞳の部分をマスク選択します。さすがにここまでオブジェクトにするのはやめておきましょう。
 ルビーオーバーレイを切り、まず茶色で塗ってみます。

 これでは死人の眼なので、ここにエアブラシを[加色混合]モードで吹き付けて中心部を明るくします。

 この[加色混合]というのは、塗るほど濃くなった[エアブラシ]-[ウエットソリッド]の逆みたいなもので、光の加色合成に基づいて、塗るほど明るくなるように作用します。

 あまり光らせると吸血鬼になってしまいますので、黒ブラシで瞳孔を作ります。

 だいぶおとなしくなりました。この眼は洗脳とか催眠状態の眼ですね。

 再び太陽マークの[明色ブラシ]を使って、瞳に輝きを作ります。
 アップでは視線の方向を掴みにくいので、新しいウインドウを隣に開き、もっと遠くから見て視線をコントロールします。
同一画像を複数ウインドウで表示する:[ウィンドウ]-[新しいウィンドウを開く]

 さあ、これで瞳らしきものができました。
 もっとアップだったら、光彩に縞模様を入れたり複雑な光沢を何重にも重ねたりという遊びができるのですが、こんな小さな眼ではあまりいじる余地がありませんので、このあたりでいいことにしてしまいます。

 あと、ここではあまり気にしていませんが、鉛筆線が上から重なっているので、輪郭の黒が邪魔に思えることがあるかもしれません。そのときは一時的に[アナログ線画]オブジェクトを非表示にして対処し、あとで[アナログ線画]側の線を修正して不要な線を消してしまいます。

 同じ手順で口も作ってしまいます。手順は省略します。

 口の上端は歯が見えているということにして白にします。
 口の色は、あまり濃くすると生々しくなりすぎて怖いので、アニメ絵では程々に薄く描いたほうが無難でしょう。

 さあ、これで人物のペイントは全部終了です!



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