この章では、先に取り扱った「オブジェクトのアルファチャンネル」という概念を駆使してリアルタッチの髪の毛を作ってみましょう。
ちなみにこのイラストは、私のホームページで来客数がのべ2万人に達した記念に作成したものです。ロゴなどにもちょっとだけ凝っていますので、こちらも参考になるかもしれません。
さて、まずファジィな下絵をスキャンします。邪魔な線がいくつも入っていますが、最後の合成を薄くするためあまり気にしなくても大丈夫なはずです。アタリ線(補助線)などは、白エアブラシで適当にレタッチして消してしまいます。
■初期状態の下絵
スキャンしてから[補正]-[トーンバランス]機能でノイズを飛ばしてシャドウを締め、鉛筆のコントラストを最大限に生かすように画質を調整します。
まず、いつも通りに下絵をオブジェクトにして、「増加」モードにします。
普段ならこの下絵を[補正]-[しきい値]でギザギザにして、これを大まかに塗り分けてパーツをオブジェクトに分割するところなのですが、今回の下絵はこの通りラフな線なので、しきい値処理などを実行したら、線がちりちりになってしまい、塗り分けの実用になりません。
そんなわけで、今回は輪郭線を使わないでフリーハンド一発でマスクを切って、これから[オブジェクト]-[マスクからオブジェクトの作成]でオブジェクトを作成します。ベースイメージは白で塗りつぶしてしまいましょう。
髪の毛は特に仕上げがややこしいので、他のパーツを先に切り出していきます。まずはセーラー服の白地からとりかかります。
適当なブラシを選択し、色を黒(非存在)にして塗り込みます。
こうすると塗られたところが透明になっていきます。
最初のうちは、削り残しがでないように[ぼかし]をゼロにして、確実に削り込んでいきます。タブレットの場合は[ツール]-[オプション]で筆圧を切らないと、うすくオブジェクトが残ってあとで困ったりします。こういうときにはマウスのほうが確実でいいでしょう。
肌、襟などは上に重ねるため、他の下敷きになるところは大胆にハミ出しても構いません。また、ハミ出し気味に塗って、確実に他のパーツに重ねなければ、パーツ間に隙間ができて背景の色が露出してしまいます。よって、正確に削り込まなければならないのは、背景との境界の部分ということになります。このあたりは、背景となめらかに重なるように[ぼかし]を軽く効かせながら処理します。
一応セーラーブラウスの余計なエリアを削り落としました。
削り終わったら、オブジェクトマネージャの[α]を叩いてモードを通常に戻すのを忘れてはいけません。
次いで襟の部分を削りだしましょう。
またブラウスを囲むように大きく矩形マスクで四角を作り、
[オブジェクト]-[マスクからオブジェクトの作成]でオブジェクトを生成します。
青く塗ったら、線画のオブジェクトを襟の上層に乗せなおします。
鉛筆の輪郭線を見ながら襟パーツを削り込みます。肌とネクタイに重なるところは削り残して、パーツ間にスキマが生じないようにします。
このように襟パーツが削り出されました。
いま思えば、あらかじめ全部非存在の黒で塗りつぶしておいて、それから白で徐々に生成していくのもよかったかもしれないと思いますが、まあこんなものでしょう。
このようにして、髪の毛以外のパーツを作成します。
ちょっと一息入れて、髪の毛の作成に取りかかりましょう。